人はいつだって、大切な人と向き合い直せる願いを表現できず衝突した家族へのラブレター

静香の世界の愛し方

――― システムコーチとして生きる人々へようこそ。
~社会人3年目からファカルティーに素朴な疑問をぶつける~

私がその社会人3年目のゆいぽんです。この会のモデレートをしております。
今回はゲストに、山田静香さんにお越しいただきました

静香さん:皆さんこんばんは。山田静香と申します。

CRR Global Japanでファカルティ(トレーナー)としてワークショップのリードをしています。また人と人との関係性や組織にアプローチをしていくシステムコーチングをしています

また普段は会社員として仕事をしながら絵も描いたりとか、いろんな表情を持っています。

今日はゆいぽんからB面を見せてほしいとリクエストをいただいているので、普段はなかなか話さないようなことも交えながら、1時間半ご一緒できたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。

――― ありがとうございます。

今日のタイトルは『静香の世界の愛し方』です。

静香さんからは、今日もきっといろんな話が出てくると思うんです。
まるでおもちゃ箱や四次元ポケットから飛び出てくるみたいな感じで。

でもそんな静香さんを何て表現しようって・・・すごく悩みました。
どこを切り取っても、切り取りようがない感じなんですよ。

それを少しこうやって(俯瞰的に)引いて見た時に、「あ、愛だな」って。

世界と自分との愛し方の話なのかなと思って、こんなタイトルをつけさせていただきました。

静香さん:

・・・なんて素敵な感性なんだろう。ゆいぽんはダンサーだから、ご自身の中にある五感、いや六感?もう全部を総動員して言葉にしてくださったんだなって。 

そういう(ゆいぽんのような)人を増やしたいって思っていて。

感じたままに表現されたことが、すごくエネルギーを持って相手に伝わる。あ、それがゆいぽんの表現の仕方なんだなって思って、それを受け止めた私は、嬉しかったんだよね。

思いがそのまま表現されるって素敵だな。今ね、改めてそんなことを感じました。

表現することは、生きること

――― ありがとうございます。

「思いがそのまま表現される」。そういう願いを普段から持っているんですか。

静香さん:

そうね。どんな人であれ、その人の真実があるなと思っているので。

表現されるのであったらね、その表現のされ方があると思うし。
表現されないんだったら、何らかの理由があるだろうし。
表現したくないんだったら、今は表現しなくていいと思うし。

―――表現をするということは、(想いや願いが)個人の中にとどまらず、外の世界に出ることを願ってる感じですか。

静香さん:そうね。私は曼荼羅を書いたりするんですが。

表現することは生きること」っていう自分の哲学みたいなのがあってさ。

今、私は自分の体の「声」というものを使って伝えてる。
そして声を出してない時も、この見た目で何かを伝えていたりとか。

それが何から出てくるのかってわかんないけど、私の中の喜びとか、苦しみとか。
皆さんのチャットの言葉からもエネルギーいただいてるけれども。

こうやってゆいぽんと一緒に会話をしながらも、その間・・・?

――― 間・・・まさに関係性ってやつですか。

静香さん:

そう!人は関係性の中で生きてると思っててね。
そこに影響を受けながら表現をしている。

1人であったとしても、 自分の過去の思い出なのか、過去の自分なのか、はたまた大自然と自分なのか。

その間に何か呼応して表現してるような感じがあって。そうしながら生きてる感じなんだよね。

―――まさにシステムコーチですね。いろんな人に影響されて、何かの表現が出る。
そこを静香さんはすごく意識的にやってる感じがしました。

静香さん: そうね。そして「向き合い直し」っていうのを何度もやってる

どうしたら家族が平和になるんだろう


――― 向き合い直し・・・。今までどういうのがあったんですか。

静香さん:例えば、そうだね。「なぜシステムコーチという仕事をしたいと思ったのか」。
そこには、自分の経験とか家族とか、そういったものの影響がやっぱりあって。

・・・すごい生々しい話をしてみようかな。ちょっと昔に戻って。

自分は昔ながらの家に生まれ育ったのだけど。本家と分家とかあって、長男が代々継ぐみたいな。

嫁舅姑問題で毎日喧嘩というか言い合いというか、とにかくピリピリした空気感が絶えない家だった


そこで生まれ育った自分の幼少期の一番の記憶といえば、

いつもお絵描きボードに

平和になりますように」って。

描いては、消してた。

――― へえ・・・。

静香さん:何度も何度も、

「仲良くなりますように」
「平和になりますように」って書いて、ピーって消して。

わぁって喧嘩してるところで、どうしていいかわかんない中で、
怖くて、とりあえず祈るしかなかった

―――でもそこには、願いを今できる状態でそのまま表現した、当時4-5歳の静香さんが・・・。

静香さん:

そっか!その時は、私にはそれが精一杯の・・・。言われてみたらそうだね。

そして(自分が)大きくなってきたら、今度は喧嘩してるとこに止めに入るんだよね。ピリピリした空間に入っていく、それはもう、毎日。

――― 毎日・・・。

静香さん:

そう、毎日言い合いや時に怒鳴り合ってて。

でも、その時ってORSC(=システムコーチング)の智慧なんて知らないからね。

自分がどう動いたら家族が平和になるんだろう
常にそんなことを考えてて。


おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、私、妹。
(父系で)血が繋がってないのは母親だけで。

今思えば、ある意味「孤独」なシステムであり家族関係だったって捉えてる。

決して父親との関係も悪いわけじゃない。だけど全員集合すると、なぜかそうなっちゃう(ぶつかってしまう)んだよね。そういう感じでずっと生きてきたからね。

長女だから、私が解決するみたいな役割を担っていた。

関係性をちゃんと「完了」させていく 

そして、私の父親が亡くなったんです。
その時の親族会議が一番の修羅場。いや・・・すごかったね。

お父さんのお母さん、つまり私のおばあちゃんをどうするか問題

お父さんの弟、妹の両夫婦、そこにおばあちゃんもいる。そして母親、妹の親族会議。怒号が飛び交って。

生きているおばあちゃんの前で、死んだ後の話。

ーーーえっ・・・。

静香さん:そう。おばあちゃんの介護 、お墓、葬式どうするみたいな生々しい話。お金と土地が絡むと大変なのね。その泥沼会議のファシリテーションを私がして。議事録とって、録音して。

もうこれがね、どんなごたごたの組織に入るよりも一番辛かった

それを経験した後にORSC(システムコーチング)に出会うんだけど。

「この智慧を知っていたら、もっとやり方があったな」とかさ。
「私、こんなに辛くなくても良かったな」とかさ。すごい感じたの。

関係性の中に人が生きてるなって、本当に思ったの。
・・・すごい熱く語っちゃったよ。

―――しかも自分も外の人じゃなくて、思いっきり関係者じゃないですか。

静香さん:そう関係者。自己管理大変よ。だって、母親が怒鳴られてるのを目の前で見るって嫌じゃない。しかも叔父さん、叔母さんに。

――― 気が滅入るどころの騒ぎじゃないなって。

静香さん:騒ぎじゃないよ。すごい可愛がってくれて、遊びにも連れてってくれた叔父さん叔母さんで。
「え!人ってこんなに変わるの?」って。お金と土地が絡んだということもあるけど、感情が物凄かった。やっぱショックだよね。

あ、(ウェビナーの)コメントありがとう。そうなのよ、辛かった。あ、なんか涙が・・・。

辛かったよね。だからその時自分のできる精一杯の関わり方でやって。
その後もごたごたが続き、また私が入って・・・みたいな。

そんな経験をするとね、自分と家族の向き合い直しもするわけよ。不思議なもんだよね。

―――すごい。普通はもう見たくない・・・。

静香さん:

そうなのよ、見たくないんだけど・・・なんでだろうね。関係性を諦めたくないんだろうね

そういう感じでちゃんとね、完了させていくっていうのが私の大切にしてることかも。

――― 完了させていく・・・。

静香さん:

逃げるってやり方も1つだと思うのね、ほんと辛かったら逃げていいと思う。

でも、その関係性を自分でちゃんと閉じに行くっていうのかな。はい、完了って。

痛むし、本当に嘆き悲しむ。だけど、ここで完了みたいな。自分でちゃんと丸をつける。
うん、結構それ大事にしてるかも。

 ―――うーん。

昏睡状態の人と向き合う

静香さん:

父親は癌で亡くなったんですが。その時は自分ができる向き合い方で、父親の看取りをしました。

そして、自分がシステムコーチングの学びを深めていく中で、アーノルド・ミンデル博士(プロセスワークの創始者)のコーマワーク(昏睡状態の人とのコミュニケーションの手法)を学ぶ機会があったんですね。

昏睡状態の人は「意識がない」って思われていますが、人が最期の瞬間を迎えるその時まで自分の意思を伝える、そしてその意思を汲み取ることができるコミュニケーションなの。

本当に微細なシグナルっていうのがあるんだけど、非言語の情報ね。

なんかメッセージがくるわけですよ。ちょっと目が「ぴくっ」て動いたりとか、微細な身体の動きとかをキャッチして。

昏睡されてる方と呼吸を合わせて、声を掛けたり、
あとは体にも触れたりすることもあるので。もちろん許可を取ってね。  

そこから対話をしていくようなサポートなんですけど。

言葉を交わせなくったって、そこに息づいている何らかの理由があるんですよね。
だって、亡くなるっていう選択をしてるわけじゃないんだもん。

だから、そこに好奇心を向けながら、その人に寄り添っていく。
その関係性に新たな展開が生まれてゆく

そんな関わりの中にも可能性を見てるんだろうね。

今、チャットでいただいた質問をご紹介しますね。
「今お話したくない、静かにしていたいという気持ちが(昏睡している方に)あった時にキャッチしますか?」 

ーはい、キャッチしますね。

その人の世界を大事にします。あ、今話したくないんだなとか、今触れられたくないよね、とか。 反応がないというのはフィードバックがないっていうふうに見るので、そこを無理やりすることはないです。

すごくゆっくりとしたペースの方もいらっしゃるし、どこかすごく動きがある方もいらっしゃるかもしれないので、その方に合わせていきます。

すごく微細に意識を張り巡らせて向き合っていく

言葉では言われていないけど、何かを伝えたいと思ってるのかもしれない。動きとかで見えることもあるし、音が聞こえてきて、息遣いが大きくなったりするかもしれないし。そしたら、聴覚でキャッチするよね。

あと関係性のキャッチ。私が近くに行ったら何か反応があるけど、別の人が行ったら反応がないなら、何か私との間にあるかもしれないなとか。



その智慧は(コーマワーク以外の)普段のコミュニケーションの中でも生かされています
非言語の情報メッセージは「まだ開いてない箱」なんて言ってね。

日常のビジネスの世界でも、すごく強がってる方がいたとしても、その背景には内側にどんな願いやメッセージがあるんだろうという視点を常に持ちながら。

あ、これディープデモクラシーだね。場にあるあらゆる声に耳を済ます。聞こえていない声はないだろうかって。 

会議とかミーティングすると、声の強い人・マジョリティの意見で意思決定されて、でも結局うまくいかないことありません?

その場には声が出てなくても、そこに何かないだろうかってすごく意識を巡らせるかな。

亡くなった大切な人と向き合い直す

静香さん:

そして父親ともう一度、向き合い直そうと思って。もう亡くなってるけど。

――― 亡くなってから・・・。

静香さん:

うん。父親にラブレター書いて、向き合い直したの。

私が知らない情報を母親にも聞きに行って。父親との出会いや、どこを好きになったとかね。
いろんなこと聞きながらそのストーリーをもう1回耕して。

それをやることで母親との向き合い直しもできて。母親にもラブレター書いて。
母親がいる仏壇の前で父親にラブレターを読み、そして母にもラブレターを読んで。

母から「私の方がラブレター短いわね」って言われたんだけど(笑)。

ああ、母はそんなふうにこれから人生過ごしたいんだとか。
人生最期、どういうふうに死にたいのかって話もした。

もう毎日ドキドキしながら。そのなんとも言えない話をするタイミングが作れなくって。
「何、急にそんなこと言うの」ってなるじゃない、絶対。

死についての話って、あんまり人はしたがらないのよ。

―――そうですね、うん。

静香さん:

だから亡くなる寸前とか、亡くなってからぱぱって話をすることになる。私も父親でそれを経験してるから。結局父親がどんなふうに亡くなりたかったのか、話すことなく過ごして。

その後にシステムコーチングとかコーマワークに出会ってるから。
この智慧を知っていたらどんだけ私は・・・ってやっぱり思ったわけ。

だからそれを伝えていく役割もあるんだろうなって思うし。
タブーとされている死とかについて、話さないまま逝くのではなくて。

どんな人生を送りたいのか、どう生きたいのかにも繋がるから。
 

母とは涙流しながらお互い話したけど。
母の好きな色とかインタビューして、私が曼荼羅の絵を描いて額に入れて。

一緒に住んでいないので、私が見守っているよって「バーチャル曼荼羅静香」みたいなのを描いて実家に置いてる。

―――肉体を超えた、魂や存在自体に対しての愛の伝え方だったんだなって。

静香さん:

なんかね、うん・・・。

もしも私が話す言葉が目に見えたら、どんな色や形をしてるんだろうなって。

大切な人にね、こう、花のような言葉を届けることができるといいなって思うわけ。

ただの言葉を届けるんじゃなく、何か色や形を添えて花束のように渡したいなって。

そう思って、ラブレター書いたの。

だから、すごくね、やってよかったって思う。

そして、花のような形の曼荼羅を描いて、父の遺影の横に置いてあるからね。
それで母を見守ってるっていう、私なりの表現の仕方。うん、愛の表現の仕方をして。

そういうことを、大切にしてるかな。

皆様、聴いてくださってありがとうございます。

――― ありがとうございました。ほんとに。 

自分の思いを表現しきるって、言えないとか言い出せないっていうのもあるし、一方で届けたいって思う気持ちにいかに自分を乗せられるかっていうような。

その葛藤を全部飛び越えて、出して、それをご両親に伝えたんだなって。

静香さん:そうだね。なかなか言葉にするの難しいからね。
意を決してでないと言えなかったりするけど、言えないままだと後悔しちゃうしね。

だから、関係性の結び直しとか完了とか。なんか大事にしてるね。

自分という中心との関係が外へと広がっていく

今日も、自分の声をちゃんと出してみたら受け止めてくれる人がいて、そこから話が展開していく面白さとか。全てが繋がっていく感じが、すごく素敵だなって。

そういうところに嬉しさを感じてます。

―――繋がっていくことが、豊かなんですね。

静香さん:

そう。今日(ウェビナーに)お越しいただいてる方も、いろんな繋がりから入ってくれて。

新入社員の時に出会った人とかも来てくださったりとか、もう本当にさまざまな方がいらっしゃいます。そして、ここでまた繋がり直すでしょうし、またその方がもしかしたら誰かと繋がり直して、広がっていく。


―――なんか、今日の話はどれも曼荼羅みたいですね。いろんなことが静香さんのとこにわーと集まって、そこで関係性の向き合い直しとか何かがあって、それが四方八方にまた広がっていくような感覚。

静香さん:いいね、ゆいぽん。まさに、ここにぎゅーっと(中心に集まってくる)自分の中にあるものを大事にしてるから。自分の中にある自分との関係性、 自分にはどんな声があるんだろう、とか。

自分を愛するっていうことが(曼荼羅のように)外に広がってく

どう自分と向き合うのか。そういう意味でも、向き合い直しってすごく重要だなって思う。

――― 他人とだけじゃなくて、自分ともちゃんと向き合い直す。
なんか、もっと自由になっていく感じがしました。

静香さん:うん。システムコーチングを学んでから、自由になったもの。自分一人で全て抱え込むような生き方じゃなくなって。だって、関係性の中に生きてるから

辛い時は辛いって言える自分でいて欲しい。聞いてくれる人が絶対にいるので。

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次回のゲストは泉英次郎さんです。彼自身、新卒から現在まで現役のサラリーマンでもあるシステムコーチです。

日本社会を支えているサラリーマン達に心からのエールを送ると共に、彼らのポテンシャルが花開くことを強く願っています。

日本のサラリーマン魂を世代を超えてモデレーターが探求していきます。

クリスマスバージョンでお届けしていきます。ぜひお楽しみに。