リーダーから始まるチームの変革社会人3年目からシステムコーチへインタビュー
【新企画】「システムコーチとして生きる人々」Vol.1
新しい企画が始まりました。題して「システムコーチとして生きる人々」。今年社会人3年目を迎えた”Z世代”のモデレーター齋藤悠衣が、素朴に愚直に様々な疑問についてシステムコーチを職業としているCRR Global Japanのファカルティへ直接インタビューするという企画です。
「システムコーチ」とはどんな職業なのか、日常どんなことを考えているのか、また日々のやりがいや苦労など、「システムコーチ」として生きることについて参加者の皆さんと一緒に明らかにしていくウェビナー形式のイベントをおこなっていきます。
記念すべき第一回目は、2022年3月23日。約10年間、会社組織の中でシステムコーチとして立ち続けている丸山まゆみをゲストに迎えました。
「社内チームコーチから見えるリーダーの姿」というテーマで、大企業組織という巨大システムの中でリーダーを支援し続けている本質に迫っていきます。【前編】と【後編】に分けてお届けします。
【前編】リーダーから始まるチームの変革
システムコーチとして生きる人
齋藤:今年、社会人3年目になります、モデレーターの齋藤悠衣と申します。普段はCRR Global Japanのオウンドメディアの運営やウェブマーケティングに携わっております。あとは週1回、管理栄養士として糖尿病内科クリニックで栄養指導や栄養相談にも、ORSCの知恵とかを使いながら実践しています。
なぜ、このような企画が立ち上がったのかというと、私は、2、3年前くらいにシステムコーチングに出会って学びを始めたんですが、最初に受けた基礎コースの衝撃が自分自身にはすごくありまして。人と人の間に立って、そこをコーチングしていくというものに出会った時の衝撃がすごくて。人生で一番刺激的な2日間になりました。システムっていうよくわからない存在にまとわりつかれたかのように、コースが終わったら夢の中でうなされるみたいな。それくらい心身共に、良くも悪くもいろんな刺激を受けました。
そんなシステムコーチングの、すごく不思議な世界観だったり、刺激的なものを伝えているファカルティという方たちってどんな方たちなんだろう。ファカルティの皆さんはシステムコーチングの実践家でもあるので、「これを実践しているって、どんな世界で生きているの?」ということがすごく気になりまして。ぜひ、それを聞かせてくださいとCRRの皆さんにお願いをして、この企画が始まりました。
そんな企画のトップバッターのゲストは、丸山まゆみさんです。まゆみさん、自己紹介をよろしくお願いします。
丸山:社会人3年目の可愛らしいお嬢さん。ゆいぽんと呼ばせていただいてよろしいでしょうか。自己紹介をさせていただくと、会社員生活を、たぶん35年くらいやっております。製薬会社に勤めていて、社内の人材を育成するという職場に行ってから15年くらい経ちます。今は、人材育成と組織開発を社内でやっていて、個人コーチングとシステムコーチングと両方やっています。
昨年の今頃くらいから、このCRR Global Japanのトレーナー、ファカルティとして働いています。CRR Global Japanは不思議な特徴ある会社で、合同会社なので共同代表も担っております。本業の会社には兼職届を出して働いております。
齋藤:すごいですね。私、3年目だけど、35年目ってすごく……。私の母と年が近いとか、いろんな違いを持っている2人だなと。だからこそ、すごく、今日不思議なものや面白いものがいっぱい発見できそうなんじゃないかと。よろしくお願いします。
社内でのシステムコーチングの始まり
齋藤:続々と皆さん、チャットに「今日の期待感」を書いていただいてありがとうございます。さっき、ど直球な質問が何個かあったので、早速、中身に入っていきたいなと思います。「システムコーチングって何ですか?」という質問があったんですけれども。そのままファカルティということで、丸投げしちゃって良いですか?
丸山:CRR Global Japanの説明会で説明しているのとは別に、今日は社内コーチというところに興味を持っていただいている皆さんもいらっしゃるので、私が社内でどう説明しているかという感じでやってみるのはどうでしょう?
齋藤:気になりますね。切り分けているんですね。CRRとしての説明と社内としての説明と。
丸山:説明会に参加される方って、基本的にはこれからシステムコーチングを学ぼうと思って来ていらっしゃる方じゃないですか。だけど会社でやる時って、参加してくださる方は、システムコーチングが学びたいわけじゃないから、コーチングだろうとチームビルディングだろうと別に良いんですよね。「成果を上げたい」とか「職場で一体感を持ちたい」とか、そういう課題が解決できれば。正確にメソッドをわかってもらう必要はないんですよね。それより「これをやるとこんな良いことがあるよ。だから、まずはやってみようよ」と伝えるのが社内でのシステムコーチングの始まりなので。そういった意味では、説明の仕方が別ですよね。
齋藤:そんな中で、システムコーチングってどういう風に?
丸山:皆さんもお手元に何か紐があったら、持ちながら。私は今、この紐を持っているんですけれども。まずは、チームの人々に対して「誰か、一人出てきてください」と言って、いじっても良さそうな一人を連れ出します。紐を持って「私とあなたの関係をこれで表わすとどういう関係ですか?」と。例えば「今日初めて会ったので、こんな緩い感じかなと思います」とか。「人の関係って目に見えないので、それを目に見えるようにやってみたらどうですか?」と。
そこから「これが中学3年で初めて付き合った、彼氏彼女の付き合いたての1カ月の関係でいうとどうですか?」とか、「20年くらい連れ添った夫婦の関係はどうですか?」とか言って。
特に「長年連れ添った夫婦」の表現は歳によってずいぶん違うんですよね。若い人だと、中学生カップルより紐が張った近い関係で表現したりするんですけど、その世代の歳の身に沁みている方々は「紐から手を離してもいいですか?」とか言ったりして、笑いをとったりなんかしていくんですけど。「たぶん、こんな感じでしょう。お互いに緊張感もないし、緩やかな関係なんじゃないの?」と紐をたるませてみます。
こんなご夫婦のどっちかがすごく変化したとします。例えば、奥さんが資格をとって「家を改装して料理教室をやるわ」と、すごく変化したとすると。今、紐の関係が変わりましたよね?
齋藤:すごい。急に力が入ったというか、引っ張る感じになりました。
丸山:そうそう。まさにこれが、関係が私たちに影響を与えているという状態なんです。通常、私たちにはこの関係が見えないから。そういう時って、人は相手のせいにするか、自分のせいにするかなんですよ。なので、変化したほうの奥さんは「私が何かやろうとすると、あんたはなんで邪魔するのよ」みたいなことだったり。夫のほうは「何かやるのは良いけど、俺に迷惑をかけんな」と。例えば、そんなことが起こったりします。
システムコーチングでやっているのは、いろんな手を使って、この紐を明らかにしているんです。いろんなツールやスキルを使いながら、皆さんの関係を明らかにしていくのがシステムコーチングです。
リーダーが「やりたい」と言っているチームにしか入らない
齋藤:チームにシステムコーチングをする時って目の前にうごめく多くの紐(関係性)がありますよね。そこに立つコーチってすごく勇気がいるなと感じたりするんですけど。そんなところから、今日のテーマである「社内チームコーチから見るリーダーの姿」に入っていきたいのですが。
例えば、リーダーがいて、自分のチームに10人のメンバーがいたら、リーダーが10人の紐をずっと見るわけにもいかなかったりするのかなと思うんですけど。そこをチームコーチが、紐も見つつ、リーダーも見つつみたいなお話なのかなと思って。そんなところを伺っていきたいかなと思っているんですけれども。
丸山:私がシステムコーチングで関わる時に、一つだけ譲れない条件があって。どんなチームでも良いんだけど、リーダーが「やりたい」と言っているチームにしか入らないんですよ。システムコーチングを会社でやり始めて10年以上経っているんだけど。リーダーがやる気じゃないと成果は出ないってことだけははっきりしてる。
齋藤:さらっと10年って言ったの、皆さん、聞いていました? 10年ですよ。
丸山:チャットに「メンバーから変えていくのは難しいんですね」と書いてくださった方がいますが、よく言われるんですよね。特にリーダーから「メンバー全員が変わりたいと思っているわけじゃない。メンバーの中で反対勢力もいるので。皆に、変えていくということに、どう賛成してもらったら良いんですか?」と言われるんですけど。メンバーの中に反対する人がいて当然。それがチームだから。メンバーの中で変えたいという思いがあることは、すごく推進力にはなる。ただ、リーダーがその気じゃないと、やっぱり変化は継続しないと言うのかな。
システムコーチを始めた頃は、「あなたのチームはうまくいっていないと聞いているので、ぜひやらせてください」ということもやったりしてみたんですけど。その場は一定の成果は出るんだけど、長続きしないんですよね。一次的な成果をどう生かしていくかというのはやはりリーダー次第なので。「あの時はすごく良い感じでまとまったんだけど、リーダーってあの時だけだったよね、職場でぜんぜん実践していないよね」となると、やっぱりメンバーは萎えるよね。
だから、すごく力が漏れ出ていく感じがして。だから、最初にリーダーと「本当にやりたいんですね?」というところを握らないと。自分もメンバーもすごくエネルギーの無駄遣いという気がしていますね。
齋藤:エネルギーが漏れ出るって、すごく気持ち悪さみたいなものを覚えたんですけど。それって、漏れ出ないようにするためにリーダーの意識とか、意図を握るみたいなところがあるんですか?
丸山:リーダーとは、すごくちゃんと話をしますね。さっき、ゆいぽんがさ「システムコーチがうごめく紐(関係性)の前に立つのは怖くないですか?」みたいなことを言っていたけど。そもそも、リーダーはそんな怖いところにいつもいる。そして、私は数時間だけだけど、リーダーは日々日々そこにいて、そこから逃げられない。
そこに私は、すごく大きな尊敬を持っているんですよね。成果を出したくないマネージャーやリーダーはいないなと思っているんだけど。その表現の仕方は人それぞれなので、その表現の中から「この人はどんな願いを持っているのかな」というのを聞き出すのが私の役割かなと思っている感じですね。
“チームの一部”でいる方が、力が出てくる
齋藤:社内のチームコーチは、チームを見ていくという感じがしたんですけど。その前に、リーダーの願いを聞いていくというプロセスが、個人コーチングみたいな感じですか? 個人コーチで見ていたら、リーダー個人の姿を見ていくんですけど。チームコーチという役割でそこを聞いていくというのは、その奥にあるチームを感じながら、彼らの願いを聞いていくという感じなんですかね?
丸山:面白いね。それでいうと、私、個人コーチングを先に学び始めたんですよね。リーダーの個人コーチングをしていたんだけど。リーダーになった途端に、“チームの一部としている”という方が、むしろ願いが出てくる感じがしていて。実際のコーチングの場面でどういうことかというと。「あなたは何をしたいんですか?」とか「あなたはどうなりたいですか?」という時より、「あなたのチームはどうなりたいですか?」という方がぐっと力が入る感じがするんですよね。これってある意味リーダーの責任感でもあるし。
もっと大きな話になっちゃうと。やっぱり人間って群れで生きる動物だから、群れをどう生き延びさせようとした途端に、すごく願いが出てきたり、力が出てくるんじゃないかなという気がしたりしていますね。
齋藤:すごく面白いなと思って。自分自身のことよりも、自分のチームのほうが、すごくエネルギーが出てくるというのは……。これって、リーダーだけじゃなくて、いろんな人がそういう経験があるんじゃないかな。例えば、自分だけがというよりも、家族の危機の時もそうだし、世界で起こっている戦争とかも「自分の国が」「アイデンティティが」という方が、人ってぐっと立ち上がる瞬間が出てきているんじゃないかなというのは。チームの願いが、リーダーを通して出てくるみたいなものに近いものをすごく感じました。
丸山:本当だね。システムコーチングでは「一人一人の声は、システムの声でもある」と言っているんですよね。だから、全員そうなんだけど、リーダーは、やっぱり責任を負っているからこそ、そこにすごく真実味がある気がするよね。
【後編】では、システムコーチから「リーダー」はどう見えているのか聞いていきます。