システムコーチングから見えるチームコーチの可能性

チームコーチとは何か?

島崎:そもそもチームコーチの定義が曖昧な中、会社内の活動に対して「チームコーチと呼んでいいのだろうか?」と回答に迷った方もいらっしゃるかもしれませんね。日本ではチームコーチという存在がまだ不明確な状況があるので、それが普及を妨げている要因になっているかもしれません。

原田:「外部のコーチとして関わっている」と回答された方の中にも、1on1のコーチングは導入されているが、チームコーチはまだまだという状況があるかもしれません。日本ではコーチングという文化が徐々に普及しはじめた段階なので、チームコーチの役割や定義についてはまだ浸透していないという現状かもしれません。

島崎:チームコーチとシステムコーチはかなり重なっている部分も多いのですが、「チームコーチ=システムコーチ」と言うつもりはありません。。

嘉村:先ほど紹介したビュートゾルフやRHDなどの事例でも、組織によってチームコーチのやっている内容や役割は様々で、一概に定義することはなかなか難しいと思っています。

原田:ちなみに『ティール組織』の中で、チームコーチの定義について触れられている部分はあるんですか?

嘉村:『ティール組織』の中では語られていませんが、ビュートゾルフの組織づくりに関わったコンサルタントの著作『自主経営組織のはじめ方──現場で決めるチームをつくる』では、チームコーチの5つの役割が定義されていますね。

島崎:これを見る限り、対立が起こったときの介入や問題点やタブーの指摘などのサポートは、システムコーチに重なる部分は多いと感じます。

原田:同書のチームコーチの役割とは、マネジャーでもなく、チームと対等な立場で、より俯瞰的にチームの声を反映してサポートしていくことかと感じました。

嘉村:マネジャーがチームが存在目的に向かって進んでるかを導く立場だとすると、チームコーチは、チームがチームとして機能しているか、その潜在力が発揮できているかを責任を持ってサポートするイメージですね。多くのプロジェクトの失敗は、チームの人間関係に原因があることが非常に多いので、チームの関係性にフォーカスしてサポートしてくれる存在が組織にとって効果的だということです。

島崎:システムコーチングの場合は、まさしくチームの関係性にフォーカスしてコーチングするというのが特徴です。関係性をシステムと捉え、「システム」に知性があるという考えをベースに、コーチングを行う手法となっています。

システムコーチングについて

原田:システムコーチングについて説明しますと、もともとはORSC(Organization & Relationship Systems Coaching)という名称で、「組織と関係性のためのシステムコーチング」という意味で、わたしたちは「オースク」と呼んでいます。組織やチームを生命体として扱う考え方がベースにあります。

関係性にアプローチするためには様々な方法やスキルがありますが、システムコーチングはチームの状況に合わせて、ワークを一緒に行いながら身体感覚を利用して関係性を明らかにしていったりします。

島崎:少し補足させてもらうと、ORSCの提唱する「関係性に知恵がある」というベースの考え方に、重要なポイントがあると思っています。先程のエンプティ・チェアの例で、「チームの声を聞くために空いた椅子に座ってみる」ということが紹介されていましたが、それってまさにシステムコーチングでやっていることなんです。

関係性システム™️の声には知恵があり、その声をキャッチすることがチームが進化する上でとても重要な要素だと捉えています。とはいえ、いきなりシステムの声を聞こうとしても聞こえないんですね。まずは一人ひとりの声が大事で、それらを丁寧に聞き合うこと。その上で個々の声が含まれた全体性の声としてシステムの声を聞く必要があるわけです。このように個々の声がベースにあって、システムの声があるという構造はキーポイントかなと思っています。

原田:実際どのようにシステムコーチングを行っているのかというと、インタビューやヒアリングを通してどんな人がチームにいるのか、チームや組織の状況や置かれている局面などを知りながら、関係性をつくっていきます。

嘉村:例えば、チームメンバーが本音を言わない、一体感の感じられないチームをコーチングする際はどう対応されますか?

島崎:システムコーチの1つのスキルとして「チームの状態を反映する」という関わり方があります。その状態もチームの何かしらのサインなのでスルーせずに向き合って、そのチームに起きていることの意味を明らかにするようにしますね。そうやってチームが自分たちの状態を自覚することで何をする必要があるのかを自分たちで気づいていくサポートをしていきます。