人々が引きつけられる「ティール組織」をシステムコーチたちが紐解く(後編)

ティール組織 × システムコーチング (ORSC)から
未来の働き方や次世代組織・チームを探求する

意図して深めていく関係性、ティール型組織にあるフィードバックと評価

ティール型組織では、信頼の下にネガティブなフィードバックは即座にやりあっています上下関係がないので、そもそも評価はあり得ない。逆に一年あるいは半年に一度のフィードバックでは、仲間とお互い、この一年どういったことに貢献してきたか、どういうことを学んだか、どのように自身の使命につながっているか、また組織はその使命をどのように応援していけるか、ポジティブなことしか話されない。信頼、きずなを深めた上で、仲間としての関係性を更新し、また次の半年一年をはじめるという仕組みがあるようです。

嘉村賢州さんのシステムコーチへの逆質問から。
言い合える関係をつくるには

(CRRメンバーより)
システムコーチングでは、ディープデモクラシーという考え方(深層民主主義と訳されるアーノルド・ミンデル博士の提唱した概念)をツールのひとつに、評価判断を手放して、自分自身の中にある小さな声を大事にするということを伝えながらコーチします。小さな声は、共同体全体の声でもあり、今必要な全体に貢献する言葉ですと。また、意図してどこかへ向かわせるのではなく、今のチーム、組織にある姿を見えるまま反映し、自覚を促すといったアプローチをします。自覚することが次に行きたい場所への変容のはじまりであったりするからです。

起きていることを察知するセンサー

ティール組織を語る時、体温計、センサーが必要だと説明します。もはやトップはいないので、自分たちが健全かどうか察知するセンサーです。オランダビュートゾルフ社を例に、あらゆる数値はICTで公開、共有され、見える化されている。それによって、おかしな点は専門家に相談して自分たちで健全化していくことができる。システムコーチングでいうセンサー、自覚を促す体温計は、この数値を計るセンサーとは違う種類の体温計のようですね。

基本となるのは全体性。自分の中にあるものすべての要素をオープンにすることよってはじめてつくり出せるもの。

なによりもまずは個人の全体性。閉じている個人が個々の中にあるものに気づいて、ネガティブなものも、安心してだして、信頼を築く。安心安全な職場をつくってはじめて組織に対してセンサーが働くようになる。個人の全体性を取り戻した先には競合相手を蹴落とすとかではない、自然と周囲に対する思いやり持つようなシステムが生まれるという発想が著者の根本にあります。

全体性を取り戻す過程で起きること。パンドラの箱を開けた先にある風景

安定的にティールを目指すことは不可能です。「未来は予測できないし、人は生命なので計画通りには動かない」世界観に踏み出す岐路に立つわけです。オレンジやアンバーのような計画通り、安定的な高い成果を維持しながら変化するのは困難で、その過程で起きるカオスは避けられません。けれども、地上のペンギンが水の中では驚くようなパフォーマンスを見せる、環境によって全く違う姿を見せる。そのようなミラクルが組織に生まれるのではないかという発想がティールです。

フレームで整理すると、昔の世界観は、だめなら鍛える、ルールや仕組みをつくって安定して結果をだすタフネス(オレンジやアンバー)。そこから、しなやかに困難に対応して元に戻っていくレジリエンス。その次が、困難や挫折、トラブルを力に変えるアンチフラジャイルです。

組織構造や事業内容が柔軟になって、お互いを責め合わない、困難から学べる組織を作った時に、様々な社会の変化をよい機会に変えていくレベルの質で仕事ができるようになる。そうなったとしたら、たのしく、社会に価値を提供できるのではないか。アンチフラジャイルな感覚の組織はオレンジの感覚からはなかなか掴めないものです。

(CRRメンバーより)
私たちの会社では、ミスや問題が起きたときにできるだけ個人ごととして扱わないようにしています。ORSCの知恵からミスや問題が起きたときに誰かの責任にするのではなく「私たちシステムに何が起きているのか?」、「この問題は私たちのシステムに何を伝えようとしているのか?」といった問いを用いて、メンバー全員で対話をします。すると、今まで一人では考えつかなったことや、新たな視点を得ることができ、みんなで前に向いていけるような感覚になります。

仲間たちと見たことのない風景に行きたければティール

だからこそ、なぜやりたいか、ティールに向かうのか、理由を持っていることが非常に大切です。カオスも失敗も、そこから学んで先に進めばいい。トップが手綱を手放して、弱さを見せられたとき、みんなで行きたい方向へ向かう。起きることへの怖さが違うものになるように思います。

嘉村賢州さんへ質疑応答

Q.そうは言っても組織の継続のためにパフォーマンスを上げなくてはと思うのですが…。ティールの中での利益の位置づけはどのようになっているでしょうか。

A.利益は後からついてくるという発想だと思います。本当に存在目的につながって内側から湧いてくるエネルギーで進んでいくと利益は後からついてくるという考え方です。利益が先にくるとたいていは崩れるから、利益を先にというのは違うといった表現を著者はしています。

Q.なぜ青緑なのですか。

A.元々は個人の成長の段階を研究したケン・ウィルバーのインテグラル理論からきています。インテグラル理論もスパイラルダイナミクスという概念から採用しているのですが、それが色で表されているところからきています。

Q.財務に関する数字を公開したことで、目先の数字にとらわれて判断に躊躇するメンバーが出てきています。透明化したことが本当によかったのかトップとして揺らぎます。

A.最終的なフォローはトップがやってくれるというレベルのまま進むのか、ただそれだと自分自身では判断できない状況も永遠に変わらない。グリーンからティールへの過程は様々ですが、その差は大きく開いていくのではないかと思います。情報を公開することによる透明性、存在目的につながって進んでいる、個人の全体性が保たれて失敗が許容される文化にある、私が主体者であるということがかみ合った上でのティールであるように思います。

Q.変化の過程で置いていかれてしまう人はいませんか。

A.大丈夫ですよ。なぜなら存在目的でつながっていますからね。


おわりに

組織には、「やっている事業」と「人の集まり」の2つの側面があると思います。人の集まりに着目すると、願っている組織のかたち、つまり、人と人が一緒にいて、傷つけあわないで、全体性を大切にして、一緒に働いてきてよかったねと思える、人が有史以来ずっと抱いてきた願いがあるように思います。
「ティール」だから目指すのではない、けれどもティールで語られる「友人と過ごすように、家族と過ごすように、職場で過ごせたとしらどんなにすばらしいだろう」、「なんのためにこの世に存在するのだろう」の願いや問いが、本日ご参加いただいたみなさんにもシステムコーチにとっても重なる時間だったように感じます。
嘉村さん曰く、理想の理想の理想を語った時間。
CRR Japanも実践者として道半ばではありますが、これからも試行錯誤をシェアする機会を持ちたいと考えています。
(CRR Global Japanメンバー)

嘉村賢州さん(左端)ご登壇いただき
誠にありがとうございました。

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