コーチとしての「私」を研ぎ澄ます──グローバルスタンダードと日本の未来をつなぐスーパービジョンCRR Global Japan 共同代表 村松圭子 (KEIKO)

コーチという尊い仕事
コーチという仕事は、時に目に見えない領域に深く入っていく、繊細で、そして尊い営みだと思います。
ORSCCとして私たちは、人と人、組織と組織、その間に流れる「感情」や「声にならない声」に耳を澄ませます。
私自身、プロフェッショナル実践コースのファカルティとして300本近くのシステムコーチングの録音でコーチの関わりを見て、そして自身もシステムコーチングを続ける中で気づいたことがあります。
それは、私たちコーチ自身の存在が、クライアントやチーム、組織に思っている以上に大きな影響を与えているということ。
だからこそ、自分がどんな存在であり、どんな風に場に立っているのか。
無意識のうちに、どんな色眼鏡で世界を見ているのか。
それを定期的に「安全に」「誰かと共に」見つめ直すことの大切さを、私はスーパービジョンを通して痛感しました。
スーパービジョンは、私にとって「自分のプロコーチとしての在り方、そして倫理観へのアンテナを磨く場」であり、より解像度高く、繊細に発揮できるようになる場です。
これは決して、コーチとして未熟だから必要なのではありません。
むしろ、コーチという尊い仕事を続けていくために、私たちにとって欠かせない「呼吸」だと思うのです。
自分の体験:スーパービジョンが与えた変化
私が特に感じているのは、ORSCCとして活動しているからこそ、スーパービジョンの必要性がより大きいということです。
私たちは、個人の内面だけでなく、チームや組織という「システム」の声を聴きます。その声は時に微細で、複雑で、そしてパワフルです。
セッション中、クライアントのシステムに引き込まれてしまったり、自分の信念や価値観が無意識に介入に影響を与えていることに、私はこれまで何度も気づかされました。
スーパービジョンは、そんな私の「無意識」に光を当ててくれる場です。
そこでは、何も隠さずに語ることができます。
「あのとき、自分がなぜあんな質問をしたのか」
「最近のセッションで、自分が最も反応した瞬間はいつだったか?その反応は、どこから来ていたのか?(不安?期待?焦り?)」
「実は気にはなっていたけど言葉にしなかったことは何か?」
そんな問いを、一緒に考えてくれるのがスーパーバイザーであり、時には共に学ぶ仲間たちです。
決して批判される場ではなく、むしろ私のコーチとしての「あり方」を大切に見つめ、育ててくれる時間。
それが、私にとってのスーパービジョンです。
海外の潮流と EMCC / ICF の違い
実は、このスーパービジョンという文化は、特にヨーロッパで非常に大切にされています。
その中でも特に影響力のある組織のひとつが、EMCC(European Mentoring & Coaching Council)です。
EMCCはヨーロッパを拠点に、メンタリングとコーチングのプロフェッショナリズムを推進する国際的な非営利団体で、倫理、能力、継続学習を重視したフレームワークを提供しています。
EMCCでは、上級資格を取得する際にスーパービジョンの受講歴が必須とされており、コーチ自身の継続的な内省と成長がプロフェッショナルとしての責任と位置づけられています。
この背景には、心理療法やソーシャルワークなどの対人支援職の伝統があり、
「支援職にスーパービジョンは当然」という文化が根付いています。
コーチがクライアントに与える影響は大きいからこそ、
コーチ自身が常に振り返り、自分をメタ視点で見つめることが専門職としての責任だと捉えられているのです。
一方で、ICF はアメリカ発祥の団体で、より実践的で、ビジネスの現場に直結するアプローチが特徴です。
スーパービジョンは必須ではないものの、近年は「プロフェッショナリズム」の文脈でその必要性が強く語られるようになっています。
日本では ICF が主流ですが、世界の潮流を見ると、EMCC のようにスーパービジョンを取り入れる動きは確実に広がっています。
そして、どちらの団体も共通して強調しているのは、
「コーチ自身の成長こそが、クライアントのためになる」ということ。
ORSCCとして、なぜスーパービジョンが不可欠なのか
ORSCC として活動していると、本当に感じます。
私たちは「目に見えないもの」を扱う仕事です。
感情の渦、組織に流れる歴史、ゴースト、
それらに触れるたび、自分の中の何かが揺さぶられる瞬間があります。

そんな時に、スーパービジョンは私に問いかけてくれます。
「今、誰のためにそこにいるのか?」
「あなたが場に持ち込んでいるものは何か?」
その問いに向き合うことで、
自分のコーチングがより繊細に、誠実にクライアントに向けられるようになるのです。
それは私にとって、単なる技術の向上ではありません。
コーチとして、リーダーとしての自分の「あり方」が、
より解像度高く見えるようになったと感じています。
スーパービジョンは、私にとって「安全な振り返りの場」であり、
そして「勇気を取り戻す場」でもあるのです。
日本のコーチの皆さんへ
日本ではまだ、スーパービジョンは決して当たり前の存在ではありません。
ですが私は心から思うのです。
コーチという仕事は、クライアントの人生や組織に大きな影響を与える尊い仕事だからこそ、
自分自身のあり方を定期的に磨き続ける場が必要だと。
スーパービジョンは、私たちの弱さを隠す場ではなく、
その弱さをも受け入れ、次の一歩に変えていくための場です。
自分のコーチとしてのクオリティ担保にもなりますし、何より孤立を防ぐ仲間作りにもなると思います。
コーチとして、リーダーとして、あなたは誰と一緒に自分を振り返っていますか?


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