「人を生かし、育て合う社会」を作りたい【前編】ORSCC櫻本真理

「人を生かし、育て合う社会」を作りたい【前編】/ORSCC櫻本真理

株式会社コーチェット代表取締役CEO
株式会社cotree代表取締役CEO
/ORSCC櫻本真理

【前編】「人を生かし、育て合う社会」を作りたい(※現在この記事を読んでいます)
【中編】コーチングの場を広げていく
【後編】すべての人が人を生かしあう未来を

昨年末、ORSCC(Organization & Relationship Systems Certified Coach)の櫻本真理さんが日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2022」で心の揺らぎサポート賞を受賞されました。

櫻本さんは、株式会社コーチェットと株式会社cotree(コトリー)という2つの会社の代表取締役CEOをされています。昨年の春には、国内最大級のコーチングカンファレンス“Coaching Transformation 2021”を主催し、成功裡に終えられました。

櫻本さんは、どんなきっかけで会社を立ち上げたのでしょうか。また、どのような思いでコーチングカンファレンスを企画し、そこで何を得られたのでしょうか。今回はWorld Workersの特別企画として真理さんにインタビューを実施、【前編】【中編】【後編】にまとめました。

「人生と向き合っていくような営み」をもっと広めていきたい

――プロフィールを拝見したところ2つの会社を立ち上げられていますが、どのようなきっかけで会社を興されたのか聞かせていただけますか。

2014年にcotreeという会社を立ち上げました。自分自身の経験から、メンタルの不調を引き起こすきっかけとなる出来事と向き合っていくには、カウンセリングやコーチングが必要だと感じたことが背景にあります。メンタルの不調と言うと、“薬を出して終わり”という精神科医療にかかるぐらいしか選択肢がないように見えていたので、カウンセリングやコーチングという「人生と向き合っていくような営み」をもっと広めていきたいと思いました。

そこから、オンラインで誰でも自分に合ったカウンセラーやコーチと相談できるようなプラットフォームを立ち上げたいと思ったのが元々の始まりです。

――cotreeでカウンセリングやコーチングの事業をされていらっしゃる中で、なぜコーチェットという会社を立ち上げられたのでしょうか? 

影響力を持った人が「人を生かし、育てる関わり」ができるように

cotreeを運営している中で一番感じたのは、メンタルの不調を抱えている人の多くは、周囲の重要な人との人間関係に悩んでいるケースが多いということです。例えば、上司や親、教師など、自分に影響を与える人との関わりの中で抑圧されていたり、自分らしさを発揮できずにいたり、成長できずにいるということがとても多いなと。そのため、メンタルの不調を抱えた方に対してカウンセリングやコーチングを提供すること以前に変えていくべきものがあると思いました。

それは何かというと、影響力を持った人が「人を生かし、育てる関わり」をできるようになることではないかと感じています。

もう一つ感じたのは、cotreeの中で起業家向けのメンタルヘルスを行っていたのですが、経営者も関係性の中で悩んでいるのだと思いました。経験者がメンタルの調子を崩すのは、お金の問題もちろんありますけれども、組織がうまくいかないとか、部下がうまく育っていかないとか、事業がうまくいかずに悩んでいるというケースがとても多かったんですね。ということは、上司や親や教師がしっかりすればいいのでは? というシンプルな話のように見えてきて。

その一方で、上司や親や教師が「人を活かし、育てる力」を学ぶ場所は用意されていないし、あったとしても足りていないのではないかと感じました。その両面から、人に影響力を与える人たちが「人と関わるための力を身につける場」を作っていきたいと思い、2020年1月にコーチェットを立ち上げました。

――昨年の春にはコーチングカンファレンスを主催されていましたが、どのような思いから企画されたのですか?

「コーチングをもっと多くの人に知ってもらいたい」という願い

会社全体としての願いは、「コーチングをもっと多くの人に知ってもらいたい」ということでした。コーチングを受ける可能性がある人にも、学ぶ可能性がある人にも知ってもらいたいという思いがありました。コーチングを知ることで、本当にいい人生の変化が起こったケースをたくさん見ていますし、コーチングという技術も、関わり方に対しても、すごく信頼をしています。

と同時に、コーチング自体は私たちにとってツールに過ぎないと感じている側面もあります。私たちはその先に、「人を生かし、育て合う社会」を作りたいという思いがあります。そうした社会を作る上で、コーチング的なかかわりやコーチング的なあり方というのは相性が良いので、コーチングを全面に出し、サービスとしても作っています。

さらに言えば、コーチングを通じてその社会を実現するためには、私たちだけではできないという感覚を強く持っています。と同時に、たくさんの方々が同じように社会を変えたい、コーチングを広めたいという思いや願いを持っていることを感じています。

そういう人たちがコーチングという切り口で一緒に集まり、集まることでエネルギーを増幅させられるのではないだろうか。私たちだけではなく、みんなでやろうという願いがあったため、志を同じくする方々にもお声をかけさせていただき、カンファレンスの場を作りました。

――【中編】では、コーチングカンファレンスでどのようなテーマを取り上げようと思ったのか、このイベントを通じて何を得られたのか――といったことに触れていきます。

(ORSCCのライター:大八木智子)

【中編】コーチングの場を広げていく/ORSCC櫻本真理