【前編】ありとあらゆる家族のあり方を応援したいORSCC 柴田純治さん&土屋志帆さん
株式会社Co-leaders 代表/ORSCC 柴田純治さん&土屋志帆さん
目の前の関係性に関わることを通じて、社会にインパクトを起こしているシステムコーチ。今回は「家族」に焦点を当て、自分たちのリソースをフルに使いながら活動しているご夫婦の柴田純治さんと土屋志帆さんの取り組みを【前編】と【後編】に分けてご紹介します。
家族も会社も2人でコーリード
純治さん:2017年に妻の志帆と一緒にCo-leadersという会社を立ち上げ、パートナーシップを支援する活動をしています。また、大学時代にアルバイトとして入ったゆめみというITの会社でそのまま働いていて、現在ウェルビーイングを推進する取締役をしています。社内コーチもしていて、ど真ん中にある軸はコーチングです。
志帆さん:私はCRR Global Japanのファカルティと、夫であるじゅんちゃんと一緒にCo-leadersの代表をしています。パーソナルコーチングやシステムコーチングを提供するのがメインで、企業に対しては研修もしています。CRRの中では、本を作るプロジェクト(人と組織の進化を加速させる『システム・インスパイアード・リーダーシップ』の翻訳)もやりました。じゅんちゃんが働くゆめみの仕事にも関わっています。
純治さん:ほとんどの活動は志帆とやっていて、24時間365日一緒にいます。家族も会社も全部2人体制でファシリテーションをする「コーリード」をしています。Co-leadersという会社の名前の思いもそこにあります。
様々なメタカップルと出会える刺激
志帆さん:現在、私たちは「ありとあらゆる家族のあり方を応援したい」という思いを持って、「ワールドワークプロジェクト」(※)を2人でおこなっています。具体的には、夫婦やカップル、家族に対するシステムコーチングに加えて、夫婦のWILLをビジュアル化するワークショップや、「いい夫婦の日」にいろいろな夫婦で対話するイベントをしています。
※ORSC(Organization and Relationship Systems Coaching=システムコーチング)の知恵を使い、目の前に起きているさまざまな問題・課題に働きかけ、より良い関係性(Right Relationship)を共に作ろうとする取り組み
※夫婦のCrossVisionは、鳥谷部大樹&愛夫妻との共同開発ワークショップです
純治さん:僕たちが行っているシステムコーチングの中には、厳しい状況のパートナーシップに対するものもあります。例えば、子どもができたけれども結婚するかどうか悩んでいるカップルや不妊治療をするか迷っているご夫婦、離婚調停中や婚外恋愛をしている方々もいます。
そうしたコーチングでは、「ご夫婦やカップルの二人では対峙できない」というピリピリ感を感じることも多く、「本気でこの問題に向き合うのか」と本気を問う感じもあります。
一方で、先ほど話した夫婦向けのワークショップやイベントでは、様々なメタカップル(※)と出会える刺激があります。こうした機会を通じて、夫婦が一つの家族の中で閉じずに、「他の夫婦と同じことを考えているよ」「こんなアイデアもあるよ」ということを知り、可能性が開けていくと良いなと思っています。
※個人としての欲求を超えて、より大きな働きに貢献するために一緒になったかのように見えるカップル
違いを超えて、違いを使っていく
純治さん:なぜ、この活動をコーリードでしているかと言うと、僕と志帆という2人の関係性を使って場に関われるからです。ORSCでは、「慣れ親しんだいつもの領域」(1次プロセス)から「まだ見ぬ未知の領域」(2次プロセス)へと向かう時に妨げとなる障壁を「エッジ」と呼んでいます。
関係性が変化する時にはそのエッジを超えていくのですが、僕たちがハグをするなど先にエッジを超えた表現をすると、クライアントもエッジを超えやすくなったり、僕たちがパートナーシップの悩みをさらけ出すことで、クライアントもオープンに話しやすくなったりします。
志帆さん:さらに言うと、このシステム(関係性)の中にある違いがコーリードをする時に活きていると思います。例えば、じゅんちゃんは直感タイプで、私は何かあるとちゃんと理由を説明して欲しい、言葉が欲しいタイプ。
2人でワークショップをする時、前に進めるのは私で、参加者がその空間にどういるか、出したそうな声がある人はいないかなどを見て場をホールドする(見守る)のはじゅんちゃんです。
純治さん:違いを超えて、違いを使っていく。パートナーシップも親子も一つとして同じものはないので、その違いを使って、ありとあらゆる家族のあり方を応援したいという思いがあります。そのためには、われわれ自身がわれわれの人生をコーリードしていく必要があるし、人生をコーリードしていく喜びを伝えたいと考えています。
志帆さん:目には見えないけれども影響を与えている考えや出来事などをORSCでは“ゴースト”と呼んでいます。例えば、男である、女である、社会的な地位も含めていろいろ背負ってきているもの、そうした強大なゴーストは、「ありのままで良い」とさせにくいエネルギーを生んでいます。
戸籍上の家族だけが家族じゃないかもしれない。男と女だけじゃないかもしれない。そうしたことを含めて、家族のあり方が今、変わろうとしているし、広がろうとしていると感じています。そこを応援していくことが、私たちのやっていることです。
コーリードプロジェクトでパートナーに
志帆さん:このように、ワールドワークプロジェクトを一緒におこなうようになった私たちですが、そもそもどのように出会ったのかについて少し話しても良いですか? 2人が出会ったのは2014年、CTIのコーアクティブ・リーダーシップ®・プログラム(※)でした。リトリートと呼ばれる合宿型のトレーニングが4回おこなわれる、10か月にわたる体験型のプログラムなのですが、その中に「コーリードプロジェクト」という課題があって。たまたま一緒にワークショップを創ることになったパートナーがじゅんちゃんでした。
※Co-Active®︎は、株式会社ウエイクアップ CTI ジャパンの登録商標です。
より詳しくお知りになりたい方は、CTI ジャパンのホームページをご覧ください。
純治さん:僕、お酒めっちゃ好きなんですけど、志帆はまったく飲めなくて。なので、「僕はお酒が飲めない人との関係性づくりがわからない。どうやって仲良くなれば良いかわからない」って志帆に言ったんです。
志帆さん:その時「はあ?」って思ったんですが、まずはお互いがどういう人生を生きてきたか、自分の人生を振り返る「人生曲線」を書いてシェアしました。そこで、2人の共通点として、“人生の底”を経験していることがわかったんです。私は子どもが生まれて、半年後に離婚をしたという闇、痛み。
純治さん:僕は大学時代の闇。一浪して大学に入ったのですが、留年して8回生までいき、最終的に中退しました。「われわれは、その闇があるからここに一緒にいるんだね」と話し、コーリードプロジェクトで、人生の闇に触れていくワークショップを創ることになりました。数か月間、2人で毎日のように話し、すごく濃いやり取りをしていました。
リーダーシップの学びからORSCの扉が開いた
志帆さん:そのプロジェクトの中で、関係性から創るとか、違いから創るということをやっていく中で何かがピンと来て、ORSC(Organization and Relationship Systems Coaching=システムコーチング)の基礎コースへ行くことを決めたんです。
当時、私は離婚していて、シングルマザーだったこともあり、「人様の関係性に足を踏み入れるなんて」と考えていたので、そこに許可を出せずにいました。ですが、もう一度人を信じること、関係性から創るということがどういうことかをリーダーシップ・プログラムで学び、ORSCの扉が開きました。
そんな中、コーリードプロジェクトをやり終えて迎えた3回目のリトリートの夜に、じゅんちゃんから「とりあえず、じゃあ、結婚する?」って、プロポーズのようなプロポーズではないような言葉を言われたんです。つき合ってもいませんし、すぐさま「自分が言っていることの意味わかっている? 子どもがいる状況わかっている?」と返しました。
私は一回失敗しているし、子どももいるし、これまで慎重に傷つかないように一歩ずつ歩もうとしていたんです。けれども、じゅんちゃんの言葉にぶち壊されるようなインパクトがあって。そしたら自分がちょっとばかばかしくなって。絶対安心なんて、そもそもないし。ちょっとふざけたアイデアに乗ってみるのも面白いかなと思いました。
こんな短期間で、関係性がないという状態から関係性は創れるんだ、創った関係性から何かを生み出せるんだ、という経験をして。しかも2人の性格や気質はこんなに違うのに、この違いを衝突とかざわつくものとしてではなく、面白がりながらYes,andして乗っかり合う体験ができるのも良いのではと思い、プロポーズを受け入れました。
純治さん:そこから、住んでいる場所をどうするか、結婚式は挙げるのか、子どもの戸籍はどうするのかなど話し合うアジェンダがいっぱいあったので、半年間システムコーチをつけて伴走してもらいました。システムコーチングと共に進んだ経験は、その後の人生に大きな影響がありました。
【後編】では、お二人がORSCを学んでどんな変化があったのか、今後どのようなことに取り組んでいくかに触れていきます。後編はこちら