ORSCの智慧をチームコーチングへ生かすティール組織から紐解くチームコーチの重要性 vol.4
昨年、ティール組織の解説者である嘉村賢州さんをお迎えして開催したオンラインイベントのトークセッションをお届けしていく、ミニコラム「ティール組織から紐解くチームコーチの重要性」シリーズ。
<ティール組織から紐解くチームコーチの重要性>
vol.1 ティール組織における3つの特徴と仕組み
vol.2 ティール組織におけるチームコーチ事例3選
vol.3 対話で深める「チームコーチ」とは?
vol.4 ORSC®の智慧をチームコーチングへ生かす(今この記事を読んでいます)
vol.5 リモートワークにおけるチームコーチの可能性
本シリーズvol.4では、システムコーチングの簡単な説明とORSCの智慧を用いたチームコーチングの実際の事例をご紹介させていただきます。
対話者:
・嘉村賢州:東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授/「ティール組織(英治出版)」解説者
・島崎湖:CRR Global Japan 合同会社 共同代表/ファカルティー
・原田直和:CRR Global Japan 合同会社 共同代表/ファカルティー
システムコーチング®について
原田:システムコーチングについて説明しますと、もともとはORSC(Organization & Relationship Systems Coaching)®という名称で、「組織と関係性のためのシステムコーチング」という意味で、わたしたちは「オースク」と呼んでいます。組織やチームを生命体として扱う考え方がベースにあります。
関係性にアプローチするためには様々な方法やスキルがありますが、システムコーチングはチームの状況に合わせて、ワークを一緒に行いながら身体感覚を利用して関係性を明らかにしていったりします。
島崎:少し補足させてもらうと、ORSCの提唱する「関係性に智慧がある」というベースの考え方に、重要なポイントがあると思っています。関係性をシステムと捉え、「システム」に知性があるという考えをベースに、コーチングを行う手法となっています。
vol2.で紹介したハイリゲンフェルトのエンプティ・チェアの例で、「チームの声を聞くために空いた椅子に座ってみる」ということが紹介されていましたが、それってまさにシステムコーチングでやっていることなんです。
関係性システム™️の声には智慧があり、その声をキャッチすることがチームが進化する上でとても重要な要素だと捉えています。とはいえ、いきなりシステムの声を聞こうとしても聞こえないんですね。まずは一人ひとりの声が大事で、それらを丁寧に聞き合うこと。その上で個々の声が含まれた全体性の声としてシステムの声を聞く必要があるわけです。このように個々の声がベースにあって、システムの声があるという構造はキーポイントかなと思っています。
原田:実際どのようにシステムコーチングを行っているのかというと、インタビューやヒアリングを通してどんな人がチームにいるのか、チームや組織の状況や置かれている局面などを知りながら、関係性をつくっていきます。
嘉村:例えば、チームメンバーが本音を言わない、一体感の感じられないチームをコーチングする際はどう対応されますか?
島崎:システムコーチの1つのスキルとして「チームの状態を反映する」という関わり方があります。その状態もチームの何かしらのサインなのでスルーせずに向き合って、そのチームに起きていることの意味を明らかにするようにしますね。そうやってチームが自分たちの状態を自覚することで何をする必要があるのかを自分たちで気づいていくサポートをしていきます。
ORSCの智慧をチームコーチングに生かす
原田:システムコーチングを行う前提として、ディープデモクラシー(深層民主主義)という考え方をお伝えするようにしています。「声なき声を声にしていく」というアプローチのことで、裏では語られているけど表には出ない声や、個人の内面に隠された声の重要性を啓蒙しています。システムコーチ自身が、普通は言いにくいようなこともあえて小さな声として発言することで、チームのみなさんが何でも言いやすいオープンな関係性を構築するようにしています。
わたしは今、「武者修行プログラム」という大学生のインターン生約40名の組織に、チームコーチとして関わっているんですが、関わり始めた2年半前から「自分たち好きなように仕事していいよ」って伝えているのに、自然に上下関係をつくるんです。統括部長や人事部長などの役職に就くと、みんなどこかの会社の管理職のように、指示命令を下したり、同じ大学生なのに上司・部下の関係性が生まれてそれなりの雰囲気を醸すようになってくるんです。
その中で、中間管理職が様々な責任を負うんですが、ファシリテーションもやらなきゃいけない、意思決定もしなければいけない、営業もしないといけないと、どんどんやらなきゃいけないことに追い詰められて、苦しんでいる人が多くいる。横で見ていて「好きなようにしていいよ」って言っているのに、自分たちの勝手な思い込みが生み出した、管理する側とされる側のすごく窮屈な関係性が見えていたんです。
ただ、この組織では「本音を言う」ことがとても大事されているので、葛藤や不満など奥にある本音を語り合うことで、組織の中に眠るディープ・デモクラシー(深層民主主義)をどんどん出し合うことで、組織の中にある矛盾を扱いながらお互いの想いを重ね続けることで、2年かけて完全フラットな組織に変化してきました。
最近では「一人一役一変態」というキャッチフレーズが出てきて、一人が必ず一役を担って、変態(自らが行動を変える)し、成果を出しいていくんだという考えのもと、40人それぞれが動き出しています。こうなるとマネジメント機能が要らなくなってきて、各々が協力し合いながら数字の管理をはじめたり、イベントをプランニングしたり、運営全てを学生自らがやりはじめています。
もちろん問題は山積ですが、この本音(ディープデモクラシー)が大切にされていくことで、どんどん進化していく不思議な組織なんですよ。
チームコーチの実践者として組織の内部でシステムコーチングの智慧を使いながら関わっていった結果、いつの間にかティール組織っぽい感じになっていたということを改めて感じました。
本シリーズvol.5では、「リモートワーク」と「チームコーチ」の可能性について探っていきます。
【ティール組織から紐解くチームコーチの重要性vol.5】
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