ORSCで思いもよらなかった未来が創られていく喜びORSCC深町英樹さん

一般社団法人 GEMSTONE 代表/ORSCC 深町英樹さん

社会起業家や社会的事業をしている会社がクライアント

当社では、より良い社会・世界を創るため、人や組織にあるGEMSTONE(原石)が輝くような事業・組織創りを心掛けています。具体的には、
①社会的事業の企画・参画・共創、
②組織や個人向けのコーチング、ワークショップ、
③新興国におけるビジネス開発支援、などをおこなっています。

今いただいている仕事の約3分の1がORSC(Organization and Relationship Systems Coaching=システムコーチング)を通した組織創り。約3分の1が経営企画、組織開発、個人コーチングなどを組み合わせた経営伴走・組織開発。その他、パーソナルコーチングやメンタリングを提供しています。

クライアントは、社会起業家と呼ばれる人たちや社会的事業をおこなっている会社が多いです。そうした人々と仕事させていただけるのは、私のバックグラウンドが影響していると思います。

深町さんのお宝MAP

違和感を感じたパキスタンでの原体験

小学校1年生から2年生にかけて、親の仕事の関係でパキスタンに住んでいました。王族など比較的裕福な人たちとのお付き合いがあった一方で、路上には自分と同い年位の子どもたちが死んだ目をして物乞いをしていて。「なんだろう、これ」と子ども心に違和感や悲しみを感じたことが、一つの原体験になっています。

幼少期を過ごしたパキスタンでの家族写真。三人兄弟の一番年下(写真真ん中)

その影響もあって、大学では国際開発の教育分野を専攻。そこからカンボジアの移動図書館でインターンをするなど、NGOの活動にどっぷりハマりました。

現地でさせていただいた素晴らしい経験をもとに、「よりお互い対等で成長し合えるアプローチはどんなものだろう?」と、模索するようになりました。そこから、ビジネスの力でその国に貢献したいと考え、ヤンマーという農業機械やディーゼルエンジンなどを扱う民間企業に入りました。

学びを経て、「国際開発×ビジネス創り」へ                            

4年間のアメリカ駐在や工場の生産管理マネージャーなど現場の前線での仕事をとても楽しんでいたのですが、自分が目指ざす方向の探究を止められなくなってきたと感じて、退社することにしました。その後、国際開発やソーシャルアントレプレナーシップを学び、「国際開発×ビジネス創り」という分野に入っていきました。
3人で共同創業した1社目の会社では、「ビジネスの力で途上国の社会課題を解決する」ことに向け、アジアやアフリカ等で事業創りを行いました。今で言うSDGsビジネスです。

最初の1年半ぐらいは難しくも楽しかったのですが、社内の経営陣の関係性に違和感を覚えたり、事業創りのコンサルティングについても、「事業としてはきれいだけけれども、本当に個人やこのチームを幸せにするのか?」と疑問を持つようになりました。

そんな時、NPO法人ETIC.の社会起業塾に参加したんです。社会起業塾なので社会的起業を成功させるという考えはありつつも、個人が本当にやりたいことや、その個人の純度の高さにすごく触れようとしてくれていて。自分に必要だったのはその“哲学観”だったとわかり、いのちを救われた感じがありました。

NPO法人ETIC.のメンバーであり、ORSCC 番野智行さんのインタビュー記事です。

これまで「ビジネスで社会を良くする」というのは、ずっと自分の内側の声だと思っていたのですが、ORSCの言葉でいうと“合意的現実レベル”よりの声だったと気づきました。そこから自分の内側に改めてつながり直しました。

それにより、これまで感じていた経営陣の関係性ややり方の違和感をきちんと見つめ、1社目の会社は手放すことを決断。新しい会社(GEMSTONE)を興すことになりました。

そこで始まったことは、ミャンマーでの図書館のサービス事業創りやインドネシアの社会起業家の伴走支援など、新興国事業のコンサルティングという面では変わりません。しかし、やり方は論理性から事業を作るコンサルティングから、事業主の想いや強み、今起きていることのプロセスを重視して事業を創る形に大きく変わりました

ORSCは本丸として外せなかった

ORSCを学ぼうと思ったのは、ORSCのファカルティがSNSに投稿した参加者募集の案内を見たのがきっかけです。過去に一度体験したことはあったのですが、なぜその時に申し込みをしたのか、正直自分でもよくわかりませんでした。

今となって思うのは、パーソナルコーチングなどを通じて個人に関わっても、行きつく先は会社やチーム、さらに言うと社会という人の集合体があって。その中で個人がイキイキできるかは、そのシステム(関係性)によるのではないかと思うんです。この「関係性」を扱うORSCは、本丸としてどうしても外せなかったというのが1つあります。

それに加えて、「良い事業を創るには、良いチームから」というのは頭ではわかっていたのですが、それに自信を持って、まっすぐ入り込むツールやアプローチが必要だったというのがもう1つの理由です。

「3つの現実レベル」のすれ違いが紛争を起こしている

ORSCを通じて学んだことはたくさんあるのですが、一例を挙げるとすれば、Right Relationship(適正な関係)の考え方は納得感があり、実践する上でも助かっています。仲良くなることが目的ではなくて、目的に沿った「適正な関係」があると知りました

先述した通り、3人で共同創業した1社目の会社は関係性や仕事のやり方に違和感を覚え、手放す選択をしたのですが、その結果、それぞれがそれぞれにやりたいことを真っすぐおこなっていて、今は「適正な関係」になったと感じています。

学んだことをもう1つ挙げるとすれば、プロセスワークの創始者アーノルド・ミンデル博士が考えた「3つの現実レベル」です。3つの現実レベルとは、数字や事実など普段私たちが現実と呼んでいる「コンセンサス・リアリティー(合意的現実)」、希望や恐怖などの「ドリーミング」、言葉にならないようなひらめきなど「エッセンス」のレベルを指します。

システム(関係性)の中で起きることは、この3つの現実レベルで起きていると考えるのですが、この3つの現実レベルのすれ違いが、社会的事業の中でも国レベルでも壮大に紛争を起こしていることがわかりました。

「インパクトの輪」が見られる喜び

ORSCをおこなうことで、世界観や価値観が広がっていく「インパクトの輪」が見られることに大きな喜びがあります。

例えば、高齢者施設向けに音楽ファシリテーションサービスを提供している会社の組織創りにORSCで関わらせていただいたのですが、当初は代表が一人で頑張ってしまうとか、意思決定など何か物事の起点になることはその方がほぼ担っているという悩みがありました。(*)

高齢者施設向けに音楽ファシリテーションをしている団体でおこなったORSC

また、アーティストであるメンバーの皆さんはすごく優しくて、感性を大事にする人たちだからこそ空気の読み合いが強かったというのもあります。6ヶ月にわたるORSCの期間中のチームの変化も素晴らしかったのですが、1年後には皆さんが自分のスタイルでリーダーシップを取っているという変化がありました。また、自立型分散組織のように代表者を経由せずにチームで意思決定がおこなわれ、動いていく流れが生まれました。

その時のグラフィックレコーディング

ORSCを実施している期間に物事が動くかどうかという変化のスピードは、本当に人それぞれ、チームそれぞれなんですが、「そのシステムが行きたい先を信じるのが良い」という学びが自分の中に経験値として、身体値として入っています。

(*)クライアントの許可を得て記載しています。

「社会的事業×ORSC」の奥にある想い

このように「社会的事業×ORSC」という形で、より良い社会を作る事業創りと組織の伴走をしています。もちろん事業として成功して欲しいし、社会課題の解決が広がるのも良いのですが、そこにいるメンバーが幸せに生きていける関わりをしたいと思っています。

社会的事業は未解決の課題に取り組むことが多く、タフな場面もよくあります。取り組む人たちは自分の想いや価値観とつながって、創造性を発揮しながら変革を進めています。

教育・福祉系NPOでおこなったORSC

社会インパクトを追求していく中で「インパクトの奴隷」とでもいうように目的を握りすぎて、自分のスタイルややり甲斐を見失うことも少なくありません。それぞれの想いが強いからこその衝突や行き違いもあり、傷ついたり燃え尽きたりしやすい傾向があります。誰かを支えたり、癒したりする人たちだからこそ、自分達も癒され、支えられる必要があるのではないかと思います。

ミクロとマクロの視点を持って進める

これまで色々な組織やチームへのORSCを通じて、互いの深い内面に触れたり、振り返りによって祝福や完了をしたり、共に未来を描いたりすることで、関係性が整い、チームが再構築されるパワーをたくさん体験してきました。関係性が整ったチームによって思いもよらなかった未来が創られていく姿を見られることは、嬉しい驚きがあり、とても感動的です。

今後については、ミクロとマクロの両翼で歩んでいきたいです。ミクロで言うと、今、自分が属している家族システムやチームがいかにハッピーでいられるかを大切にしていきたいです。ワークライフシナジーの探究、ですね。それが結果として、大きな“ワールドワーク”につながる予感もします。

今年のテーマは「陽の当たる道はどっち?」なのですが、広い世界の素晴らしさを味わえるように自由に羽ばたきたいです。国境を越えたORSCや、異文化シナジーを創るORSCなどもワクワクします。世に吹く風を感じながら、陽の当たる方向を向いて「インパクトの輪」が広がっていく、そんなお役目を果たしていきたいと思います。

ORSCもおこなったGEMSTONEでのリーダーシップ育成プログラム


▼一般社団法人 GEMSTONE
www.gemstone-global.com

▼Personal Mentorship & Coachingサービスサイト
https://sky.gemstone-global.com/mc

【編集後記】
深町さんは現実を見つめながらも、言葉にならないエッセンス・レベルのものを感じ取り、進む道を切り開いて来られた方だと感じました。これからも「社会的事業×ORSC」を通して、好奇心のままに羽ばたいていかれますよう願っています。(ORSCCのライター:大八木智子)