子どもたちを通じて同じ世代のお母さんを支援したいORSCC山本静香さん

山本静香

学校法人山口学園 ECC国際外語専門学校 高等部 教務課責任者/ORSCC 山本静香さん

英会話のECCに就職

現在、大阪にあるECC国際外語専門学校の高等部で働いています。高校生の時にアメリカに1年留学したり、30カ国ぐらいバックパッカーをしながら旅をしたり、すごく海外に興味があったんです。留学前の1年間、英会話のECCに通っていたお陰で留学が実現したこともあり、大学卒業後は株式会社ECCに入社しました。ECCには、英会話教室などを運営している株式会社部門と学校法人部門があり、後者に配属になりました。

はじめは営業の仕事から始まり、いろいろな部署で働いていたのですが、2023年4月にECC国際外語専門学校に高等部が開校することになり、新しい部署へ異動しました。この高等部ではクラスの担任をしたり、キャリアデザインの授業をしたり、教務課の役割をしています。

高等部ではクラスの担任をしたり、キャリアデザインの授業をしたり、教務課の役割をしている静香さん

「ORSCって何かいいらしいよ」と聞いて

ORSC(Organization and Relationship Systems Coachingシステムコーチング)の基礎コースを受けたのは2013年11月、ひょんなことがきっかけでした。2012年にCTIでCPCC(Certified Professional Co-Active®︎ Coach)※1を取得したのですが、それだけでは何か足りないと感じていたんです。

そんなタイミングでCTIから上級(プロフェッショナル)コースのスーパーバイザー※2の募集が来ました。受けようと思って調べてみたら、同社のコーアクティブ・リーダーシップ®・プログラム※1のコースに参加している必要があることがわかりました。


※1 CPCC、Co-Active®︎は、株式会社ウエイクアップ CTI ジャパンの登録商標です。
より詳しくお知りになりたい方は、CTI ジャパンのホームページをご覧ください。

※2 実際のクライアントとのコーチングセッションに対してフィードバックをおこなうプロコーチ

このコースは10か月の間に4回のリトリートに参加する必要があるので、さすがに難しいだろうなあと思いながらも勇気を出して上司に相談すると、案の定「返事は待ってくれ」と言われたんです。その1週間後、「行っていいよ」という思いもよらぬ返事が返ってきて、思わず涙してしまいました。そこでさあ申し込もうと思ってCTIに連絡したら、「空いていません。キャンセル待ちです」と言われて。リトリートが始まる初日まで待ったのですが、ダメでした。

その時、CTIのコースで「ORSCって何かいいらしいよ」と複数の人が話していたことをふと思い出したんです。調べてみたら、ちょうどその週末に基礎コースが東京で開催される予定でした。

ORSCの事務局に連絡をしたら「まだ大丈夫です」と言われて申し込んだものの、泊まるホテルが空いていなくて。唯一空いているのが1泊10万円のスイートルームでした。事務局の人に「ホテルが空いていないので、キャンセルします」と伝えると、なんとホテルを探して連絡をくれて、無事に参加できることになりました。

夫にある事を内緒にして参加したトレーニングキャンプ

そこから基礎コース、応用コース、ORSCC(Organization & Relationship Systems Certified Coach)の資格を取得する実践コースまで行きました。2015年6月末には、実践コースの中間に行われるトレーニングキャンプが東京であったんです。実はその時妊娠していて、8月に出産を予定していました。長い間不妊治療をしていて、8回目の体外受精を経ての妊娠でした。

医師からは「行くんだったら、東京で産む気で行きなさい」と言われて。そう言われたことは夫に内緒で、母子手帳を持ち、大阪から新幹線のグリーン車で向かったんです。一緒にコースで学んでいる仲間に話したら心配して、病院や陣痛タクシーを探してくれました。

その後、帝王切開で出産。その翌日には、出席率が足りなくなるかもと思い、病室から実践コースのオンラインの授業に出たり、クライアントにORSCのサンプルセッションをしたりしました。退院してからは、乳児用の椅子を揺らしながら授業を受けたり、泣き出す娘に授乳しながらコーチングセッションをしていました。

子どもをサポートしながらお母さんを支援

今、思いのある「ワールドワークプロジェクト」※3は、子どもたちをサポートすることによって、間接的にお母さんを支援することです。実際に支援しているのは高校生なのですが、子どもたちを通じて自分と同じ世代のお母さんをサポートしたいのだと最近気づきました。


※3 ORSCの知恵を使い、目の前に起きているさまざまな問題・課題に働きかけ、より良い関係性(Right Relationship)を共に作ろうとする取り組み

ECC国際外語専門学校高等部は一条校であるECC学園高校のサポート校で、生徒たちはほぼ毎日学校に通ってくれています。本校の高等部には、様々な経験をしてきた生徒もいますが、この高等部に来てからは平均90%くらいの出席率になっています。それはなぜだろうと考えた時に、もしかしたらこれは「お互いを支え合う関係性の力」なのではないかと思いました。

何が起きても乗り越える力がある

個人的に、集団をサポートするためにORSCのツールを活用しています。例えば、DTA(Designed Team Alliance:チームの意図的な協働関係)を使ってクラスのルールを作ろうとしたら、「ルールという言葉は縛っている感じがするから、マインドにしよう」という声を生徒が出してくれたことがありました。

クラスの中で「役割」を決めた時には、「誰か困っている人がいたら、先生に言う役になりたい」という意見が出ました。普通だったら「先生に言う役」なんて“チクリ”と言われるかもしれないけれど、「役割」だったらそれもありです。

そんな矢先に、生徒の間である出来事が起きました。その時は関係した生徒たちを呼んで、対話をしました。対話の中では相当な怒りも出てきました。自分がしたことが思いもよらないインパクトを起こしていると気づき、泣いている生徒もいました。

このままだと学校に来なくなってしまうかもしれないと思ったので、「私はあなたのことを応援しているので、卒業証書は郵送じゃなくて、絶対手渡したいから」と声をかけ、一緒に号泣しました。どうなるかと見守っていましたが、翌週生徒たちは全員登校してくれました。

その出来事を受け、キャリアデザインの授業で「関係性の4毒素」※4のワークを実施し、クラスで毒素が出た時の対処法を考えました。その時の対話では「積極的に相手の話を聞く」「自分の思いを言葉/声にする」など様々なアイデアが出ました。こうした出来事はありましたが、今ではこのクラスで何が起きても乗り越える力があると思っています。

4 人間関係を壊す毒素には「非難」「防御」「侮辱」「無視・逃避」の4つがあるという、ジョン・ゴットマン博士が提唱した考え方

キャリアデザインの授業で「関係性の4毒素」のワークを実施しました
クラスで毒素が出た時の対処法をみんなで考えました

子どもが元気だったら親も元気になれる

改めて、子どもたちをサポートすることによって間接的にお母さんを支援することが私の喜びだと感じています。どの生徒も自分自身のことをもっと信頼できるようになると良いなと思っています。この4月、ある生徒のお母さんが「ようやくわが家にも春が来ました」って言ってくれたんです。そのことを一番嬉しく思っています。

私は子どもが元気だったら親も元気になれると考えています。もちろんお父さんもなんですが、身近な保護者はお母さん。お母さんの不安が減ってイキイキすると、家庭の中に笑顔が増えたり、お母さん自身がもっと自由になれたりすると思うんです。「お母さんが見るのは足元ではなくて、上にあるこの空(希望)ですよ」と伝えたいです。

先日、実践コースの仲間に「静香はお母さんたちに関わることで、自分自身を解放していっているね」と言われました。フルタイムの仕事をしながら子育てをして、さらにやりたいこともあって、毎日がパンパンなんです。そんな時に「自分の子育ては大丈夫だ」と思えると、全部が自信につながる感覚があります。だからこそ、間接的かもしれないけれど、子どもたちを通じてお母さんをサポートできれば良いなと思っています。

子どもたちを通じてお母さんをサポートしたい

小中学校にもORSCを広めたい

今、私の娘は8歳です。小学校から集団や関係性を学ぶ機会があれば、もっと人間関係のノウハウを学べるのではないかと思っています。何かあったら担任の先生に言うのではなくて、自分たちで解決する力を持てるようになるし、多数決で声の大きな方で決めるわけではなく、少数派の意見もちゃんと取り入れるようになるだろうと思うんです。

今は学校ではカウンセリングが主体ですが、集団やシステム(関係性)を扱うコーチングも重要な役割を果たすことができるのではないかと考えています。そうなったら、もっとみんなの「生き抜く力」が高まるのではないかと思います。将来的には小中学校にもORSCを広められたらいいなと思っています。

▼ECC国際外語専門学校 高等部
https://kokusai.ecc.ac.jp/highschool/

【編集後記】

長年の不妊治療を乗り越えて妊娠・出産し、自分のやりたいことに取り組み続けている静香さん。ORSCの応用コースが一緒で9年ぶりに話しましたが、ますます魅力を増してパワーアップしていました。母として、コーチとして活躍する静香さんがその役割を超え、さらに自分を解放して、熱い思いを実現していかれることを願っています!(ORSCCのライター:大八木智子)